あなたの愛に包まれて
「失敗ばかりでごめんなさい。」
千晃がしゅんとするのを見て匡祐は冷やしていた千晃の指が少し赤くなっているのを見て、千晃の手を拭きリビングの椅子に千晃を座らせた。
最近大活躍中の救急箱をもち、千晃の正面に座る。
匡祐は慣れた手つきで千晃の指に軟膏をぬった。
「ありがとう・・・」
まだシュンとしている千晃をそっと抱きしめる。

「怒ってるわけじゃないんだ。心配なんだよ。」
匡祐は千晃が不安そうな表情をしている理由が分かっていた。
「なんだか千晃を苦労させているような気になってさ。」
「そんな。私が何も今までやってこなかったからうまくできないだけで、きっといつかできるようになるから。」
千晃が慌てて話す。
「違うよ。そんなに頑張ってほしくないんだ。今までさんざん頑張ってきたんだから。」
匡祐は少しでも千晃にゆっくりとしてほしかった。

なのに目覚めてからの千晃はリハビリや財閥のあと仕事に取り組んだり家事の勉強を始めたりとまったくもって休んでいない。
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