あなたの愛に包まれて
運転席に回った匡祐はシートベルトをした。
「運転はよくされるんですか?」
千晃は運転免許すら持っていない。
「はい。本当は誰かの運転よりも自分で運転がしたいんです。下手ではないと思いますよ?18歳で免許を取ってから毎日のように運転してますから。」
「そうなんですか」
千晃はふと匡祐の生い立ちを思い出した。

匡祐は生まれつき財閥の後継者として生きてきた自分よりも自由な時間を過ごしてきている。

「じゃあ、行きますか?」
「はい」
「あっ。」
「?」
匡祐がふと千晃のシートベルトを締める。その動作に一気に距離が近くなった二人。
千晃は思わず目をそらした。
「今度こそ行きますか」
「はい」
匡祐はそう言ってハンドルを握った。
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