あなたの愛に包まれて
数日後。千晃の部屋の前でいつものように書類を整理していた剣持の前に現れたのは助川と匡祐だった。
「遅くなり申し訳ありませんでした。ちょうど海外に出張でして。」
助川の言葉に剣持が珍しく微笑む。

「お待ちいたしておりました。」
剣持はもしかしたら自分が首を切られるかもしれないという覚悟のもと、匡祐を呼んでいた。

この窮屈な世界から千晃を連れ出せるのは匡祐だけかもしれないと剣持は会議室を二人が抜け出した日に思い始めていた。

息苦しいこの世界から抜け出すすべをしらないお嬢様が自由な世界を得られるとしたら、匡祐の力が今は必要だ。

匡祐が剣持に頭を下げると剣持も微笑みながら頭を下げた。

千晃の部屋を剣持がノックする。
先に剣持が千晃に「お客様です」と伝えた。
「今日は来客はないって言ってたでしょ?」
千晃の切羽詰まった声が聞こえてくる。
< 49 / 270 >

この作品をシェア

pagetop