あなたの愛に包まれて
そんな匡祐が財閥に入ることになった時、母の病気を治すためにどうしても多額のお金がいるとわかった時、匡祐は父に向って頭を下げた。
自分にお金を貸してほしい。自分を助けてほしいと。

この世界にはどうしても生きていくためにお金がないとならないときがある。

自分にはお金も力もなく、結局力のある父に頼るしかなかった。

世間からどんなことを言われてもいい。
そんなことは痛くもかゆくもない。

父は匡祐が母を助けるためにお金を欲しがっているという弱みに付け込み脅しのような手を次々につかってきた。そんな父からの仕打ちに匡祐は生まれて初めて人を恨んだ。


恨んでいる相手に頭を下げて言いなりになっていることがつらい。
本当は今すぐにでも逃げ出したい運命から逃げ出せないのは母や弟への想いがあるからだった。
どんなことでも耐えて見せる。二人のためならと思っていた。

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