めんどくさがりな彼女 (男目線)



──パサッ



そんな音がして、頭を下げていた俺はおそるおそる顔をあげた。



ミサが、雑誌をそこらへ軽く投げたんだ。



「はあーーーーーっ」



この上ないくらいめんどくさそうに長い長いため息をついたあと──

ふっ、と笑った。

そのあまりに可愛い微笑みに………俺の心臓はまるで初恋かっていうくらいどきっとしてしまったんだ。



「……だいたい浮気なんて、わたしがそんなめんどくさいことするはずないでしょ」



「た、たしかに……。

じゃあ、俺と付き合うのはめんどくさくないってことでいいのか……?」



「ううん、めんどくさい。最上級に」



グサッグサグサッ

う……殺られた……。



「さ、最上級とかひど──」

──ぐいっ

言い終わるころ、

めんどくさがりな彼女が自ら俺のほうへ来て、

襟元を軽く引っ張ってきた。



えっと思ったときには

唇に柔らかくて生温かい感触がして、

そして──溶けた。




「わたしのめんどくさい相手はケイ、あんた一人で十分ってことだよ、ばーかっ」




「っ…………」


うっわ…………もう…………すべてにおいて、降参だ。



結局俺は、このめんどくさがりな彼女には勝てない。


いや、むしろそれでいい。


だからこれから先もずっと──


俺だけのめんどくさがりな彼女でいてほしい。



*おわり*


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