25年目のI love you~やっぱり一緒に・・・②~
「お前と別れてからの・・・いや、お前を口説いてしまってからの俺は、最低だったと今更ながら思ってるよ。全てを失ったのは、自業自得としか言いようがない。後悔してる、だが今の俺には、もう何も残ってない。」


「・・・。」


「今の俺には、立ち上がる力もないんだ。このまま野垂れ死にでもした方がいいのかもしれない。だが、弱い俺にはそれすら出来ない。生きる力が欲しいんだ、朱美!」


そう言ってまっすぐに見つめてくる男の視線に耐えられなくて、私は目を背ける。


「朱美、お前が好きだ。」


その男の言葉に愕然とする。


「お前のことが忘れられない、だからお前のことを探してたんだ。俺に生きる力をもう一度与えられるのは、朱美、お前だけなんだ。頼む、俺と一緒に来てくれ。」


「イヤ!」


と叫んだ私だったが、次の瞬間、男の手が私の身体を強引に抱き寄せる。驚いて抵抗しようとするけど、そのまま唇を奪われてしまう。


懸命にもがくけど、驚くべきほど強い力が私の唇を男の生贄にし続ける。やがて男の舌が私の中を蹂躙しようと侵入を試みて来たのに気付いた私は、懸命に力を振り絞って、男を突き放した。


「お願い、帰って。帰って下さい!」


「ふざけるな。お前、人の人生をめちゃくちゃにしといて、自分は何事もなかったように、のほほんと平和な家庭で、このまま暮らし続けるつもりか!そんなこと、絶対に許せるか。一緒に来るんだ。」


そう言うと、私の手を引っ張り、強引に家から引き摺り出そうとする男。


「イヤよ、離して。警察を呼びます!」


必死にもがく私、文字通りの修羅場が展開されていたその時だった。


玄関のドアが開いたと思ったら


「お前、何やってるんだ!」


次男だった。会社から帰って来たのだ。入って来た次男を見て、一瞬息を呑んだ男は、次の瞬間、私の手を離し、次男を突き飛ばすと外に飛び出した。


「待てよ!」


と叫ぶ次男を


「清司、いいの!」


私は呼び止める。その声に、ハッとした次男は、慌てて私を抱き起こす。


「母さん、大丈夫か?」


そう声を掛けてくれた次男に、私は蒼い顔で頷くのが精一杯だった。
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