守る理由。
少しの対峙のあと、“何か”は息を切らし始める。
〈くっ…流石と言ったところか…〉
「お前如きが俺に敵うと思うな。」
よく分からなかった…そして目が追いつかなかった。
でも…それほどの戦いを、きっとしていたのだろう。
〈次来る時は…あの方々の誰かを連れてくる…覚えておけ!〉
負け犬さながらの捨て台詞を吐き、消えて行く“何か”。
消えて行ったという事実に今にも倒れてしまいそうなんだが、それを我慢しながら彼の次の言葉を待つ。
「…説明をしなくてはな…あんたの家はどこだ。」
『…家、』
ああ、そうだ、僕は今日…全てを終わらせようと思っていたのだ。
しかしそれを知りもしない彼に話しても、どうしようもないだろう。
そう思い、返事に戸惑い目を逸らす。
…僕が消えた所で、誰も何も困りやしない。
その気持ちがあるからこそ…今この人と出会ったものの、そんなの関係なしに…さっきの出来事ばかりが頭を巡っているのだ。