守る理由。
蒼司「…あんたがそんな顔をするな。」



そう言いながら、彼は僕の頭を軽く撫でる。



『…でも、』

蒼司「大昔の人間の所業が理由で妖怪達は自由に存在することが出来なくなった…それは確かに事実だ。…だが、その時生きていたわけでもないあんたがそれを悔やんだ所で、今更どうにか出来る話でもない。過去のことだから…仕方ない、で割り切るしかないだろう。」



…不器用で、ちょっと毒のあるような言い方。

だがこれは…きっと彼なりの励ましという奴なのだろう。



『…ありがとうございます。』

蒼司「礼を言われるようなことはしていない。」



そう言いながら手を退ける。



…もう少し撫でて欲しかったな…なんて。



心の奥底で、彼の手に安らぎを感じたらしい僕は、口に出さずそんなことを思いながらも彼を静かに見る。

…何だろうか、彼と一緒に居ると何故か落ち着くのだ。



不思議な人だなぁ…。



色々な気持ちを込めながらそう思い、離れてしまった彼の手を少し名残惜しく思いながらも見つめた。


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