守る理由。
『えっと…じゃあ…』



僕の返事を待っているのか、じっと見ている彼。

正直整い過ぎているくらいに整っている美形な彼にそこまで見られるとかなり緊張するのだが、そんなことはどうやら言っていられない状況だ。



『…人幻界…?で…』

蒼司「人幻界だな、では行く準備をするか。」

『待って!?』



そう声を荒げれば、何事かと言いたげに僕を見る。

だがその顔をしたいのは僕だ、あまりにいきなりすぎる。



『明日からじゃなかったんですか…!?』

蒼司「ああ、準備をするのは俺だけだ。あんたは休んでおけ。」

『え、いや、準備って…!?』

蒼司「人幻界は人間やそれ以外の存在もいる。中には凶暴な幻獣なども存在するのだ。刀を磨くことから始め、他の武器なども色々準備が必要になる。」

『人幻界そんなに危ないんですか!?』

蒼司「そもそも人間界以外に危なくない世界などない。」



初耳過ぎることを一気に言われ、さっきよりも大きな混乱が来てしまう。

結局どの世界を選んでいたとしても危なかったということになるだろう。



『…それ、僕何か用意しなくていいんですか…?』

蒼司「あんたは戦わなくていい、俺に守られておけばいいからな。」



…守られるだけは嫌い、なんて言える雰囲気でもないため黙り込む。

僕は一体何のために旅をすることになるのだろう…僕自身がそこまで力を求めているわけでもないというのに。

そう思いながら、静かに胸元にかかるネックレスを握った。


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