守る理由。

蒼司「そう言えば…あれは読んだか？」

『あ、読みました読みました。人幻界選んで正解でしたね。』



最初に選ぶのなら、人幻界か精霊界が妥当なのだろう。

そう思いながらそう言えば、彼は読んだことにホッとしたのか少し嬉しそうに僕を見た。



蒼司「読みづらくはなかったか？」

『大丈夫でしたよー。』

蒼司「それなら良かった…。」



僕に読ませるように書いたのか…いや、守るべき存在のだめに書いたのだろう。

まさか守るべき存在がここまで普通で平凡だとはきっと思わなかっただろうが。



蒼司「あんたは…これからの旅に、不満はあるか？」


今更ながらのその質問に、思わずずっこけそうになる。

…気にはしていたのかもしれない、気付かないようにしていただけで。



『…何故？』

蒼司「…見たところ、人間年齢で言う高校生くらいだろう…丁度人生を謳歌している頃のはず。…それなのに突然旅に出るなど…嫌なのではないかと思ってな。家族も…友人もいるだろう…。」



今更そんなことを言われた所で、変えることも出来ないくせに。

そんなことを考えながらも、僕は今日あったことを思い出し…



『…気にしなくて良いんじゃないですか。』



そう、返事をしていた。