ペトリコール
「寒いよー」

プールから上がった夏菜は唇を紫色にしながら
湿ったバスタオルに包まっている。

小雨の中、気温は上がらず夏菜だけじゃなく
プールに入ったみんな唇が紫色だ。

男の子達は、ブルブル震えてるくせに、上半身裸のままガリガリなくせにボディビルダーみたいなポーズをして騒いでいる。

「男子ってほんとバカだよね」

夏菜は名前の通り元気でハッキリしていて、真っ青な夏の空みたいな子。
男の子っぽくて、クラスのリーダー的存在。

母子家庭に育った夏菜には弟が2人いる。
面倒見がよくて私とは正反対な性格をしている。

面白い事ひとつ言えない私と仲良くしてくれてるのは保育所から一緒だからに違いない。

「でも、楽しそうじゃない」

春に転校してきた弥生ちゃんも名前の通り
古風なおっとりした性格をしている。

話し方も、ゆっくりで綺麗に伸ばした長い髪を
いつも綺麗に結ってもらっていた。

「弥生は拓実推しだからでしょ」

「ち、違うわ、違うわよ」

耳まで真っ赤にした弥生ちゃんはさっきまで
寒い寒いと言っていたのに一気に熱くなったのか
顔を手で仰ぎ出した。
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