ペトリコール
眩しいくらい底抜けに明るい太陽みたいな夏菜と
羨ましくなるくらい女の子の憧れを持つ弥生ちゃんの2人を見ていると、私もこんな風になりたいと思う。

どんな時もいつだって私の中にあの人がいる。
瞬きをした時、振り返った時、授業中先生に当てられた時。
友達に手を振った時、知らない人とすれ違った時、眠りにつく時、目を覚ました時。

いつもいつだって、あの人が私の中にいる。
怖い顔をして、きつい目で私を見つめている。

こんな風に夏菜達と話していてもあの人はいる。

あの人に囚われず、笑えたらどんなに楽しいんだろう…

私に笑える日が来るのかな。

「二葉?聴いてる?」

「あ、え、ごめんなさい」

「二葉はすーぐどっかいっちゃう。二葉の特技二次元ワープ」

「あはは、二次元ワープだって、おかしいっ」

あの人に囚われている時間を夏菜は二次元ワープと呼ぶ。

知らない人からすればそう思われても仕方ない。

「特技だからね」

だから、私は適当に話を合わせる。
自分勝手でワガママな私を閉じ込めながら。

2人と同じにはなれなくても、嫌われたくない。



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