ペトリコール
「送ってあげたいんだけど、佐吉が熱出してて
病院連れてかなきゃいけないの」

傘のない私に夏菜はそう言ってくれる。
だけど、家は真反対の場所。

「いいよ、大丈夫。走って帰った方が早いから」

「私、送っていくよ」

弥生ちゃんもそう言ってくれるけど、通学路以外の道を行くのは禁止されているからと断った。

優しく心配してくれる2人に嘘をついている事に胸が痛む。

自分勝手でワガママな私を知ってしまったら
2人はもう私に話しかけたりしてくれなくなる。

「また、明日ね!」

これ以上、嘘はつきたくなくて私は2人より先に走り出した。


いつも胸の中にモヤモヤがいる。
黒くて厚くてズシリと重いモヤモヤがいる。

どうすれば、私の中の悪を消せるんだろう。
考えれば考えるほどわからなくなる。
あの人に怒られる事がなくなるんだろう。

行き着く先はそこになる。
< 13 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop