ペトリコール
いつもは帰りたくなくてゆっくり歩く通学路。

走ると泥が服や靴に飛び散るから今日は早歩きで急ぐ。
このくらいの雨なら玄関の前で払えば怒られずにすみそう。
この間、時間稼ぎで立ち止まったあじさいが咲く家が見えた。

後、少しで家につく、そう思った時雨粒が大きくなった気がした。

空を見上げると、勢いよく雨が降り出しているのがわかる。

「大変…」

雨が、強くなればびしょ濡れになる。
どんなにゆっくり歩いても泥があがる。

スピードをあげて
水たまりに気をつけながら前に進む。

ずっと早歩きしていたから息が苦しい。
頭もガンガンするし横腹も痛くなってきた。
何より包帯の下の傷がズキズキと疼いている。
だけど、そんな事を気にしてはいられない。
< 14 / 18 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop