ペトリコール
梅雨が明けると言われてからも、なかなか明けないまま体育の授業のプールが始まった。

今日は降ったりやんだりの小雨の中、プール開きが行われる。

「二葉ちゃん、プール入らないの?」

「うん」

「二葉は、心臓が悪いからプールには入れないんだよ」

転校してきたばかりの弥生ちゃんに、保育所から一緒の夏菜が教えてくれている。

「でもさぁ、この間ママとアルバム見てたらさ、保育所の時は二葉プール入ってたんだよ。
赤いイチゴの水着着て、可愛かったんだよ」

覚えている。
保育所のお泊まり会の時、
ビニールプールで皆んなで遊んだ時の写真だ。

まだ、うちにあの人がいなかった頃。
私はみんなと一緒だった。
同じように毎日を過ごしていた。

「心臓が悪いのがわかったのは10歳になってからだから…」

自分勝手でワガママな私を隠す為に私は嘘を覚えた。

ひとつつく度に嘘をつくのが上手になっていく。


バレない為に、嘘を積み重ねていく



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