俺の前で泣けばいいじゃん
「………」
私が黙っていると、パッと手を離してくれた。
「あれ?拗ねちゃった?」
「拗ねてなんかないもん!」
「相変わらず素直じゃないなぁ」
「ってゆーか!なんで私が笑ってないなんて思うのよ!」
人差し指をビシッとアイツに向けた。
そこが1番気になる。
私の作り笑いが見破られるなんて…!
「んー、なんとなく」
「なんとなく!?」
ショックを受けてると、真面目な顔してるコイツの目線が真っ直ぐに私を捉える。
「なんだって分かるよ。
だって、ずっと見てきたんだから」
……へ?
「それって、どういう……」
こと?って聞こうと思ったんだけど、
─────キーンコーン…
タイミングが良いのか悪いのか、チャイムが鳴った。
昼休みが終わる、5分前のチャイムだ。
「やばっ!!5時限目始まっちゃうよ!」
勢いよく立ち上がる。
チャイムが鳴ったっていうのに、コイツは動こうとしない。
「早く!行くよ!」
「や、いーや。ここでサボるよ」
そうだった。コイツはサボり魔だ。
「もー!私は行くよ!」
「うん。行ってらっしゃい」
時間が本格的にやばいので、ヤツに背中を向けて走り出す。
「……何かあったらここに来なよ。
話くらい、聞いてやるから」
………そう聞こえたのは、きっと空耳だ。