嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編
教頭先生からスマホを受け取り、もう一度保健室に行ってご挨拶をしてこようかと思い、向かうと先客がいた。



「はーちゃん...!」



上下黒、いわゆる黒ずくめの男が藤宮さんに近づいていくのを目撃した。


あの衣装は確か...武道系のやつ。


袴だっけ?


ずいぶんと重装備で、大変ですこと...。


お邪魔しちゃ悪いから退散しよう。


と思ったのだが、



「あら、星名さん。スマホはもう大丈夫?」



養護の先生がわたしに気付いてドアを開けてしまった。



「ちょうど今ね、藤宮さんの幼なじみの方がいらしてるから、星名さんの口から事情を話してあげて」


「えっ...わたしですか?」


「ええ。だってあなたが第一発見者ですもの」



わたしはしぶしぶ中に入ると、先生のあとを怯えながら着いていき、黒ずくめの男に接近した。



「桐生くん。こちらが藤宮さんを助けて下さった星名さんです」



うわわわわ...。


戦国時代の武装みたいで間近で見ると余計怖い。


何も言われませんように。


祈りながら顔を上げると、向こうが思いっきり頭を下げた。



「はーちゃんを助けていただき、ありがとうございます!」



ま...まさかの...


礼儀正しい系男子?


確かに、この衣装からも感じ取れるものはありますが。


わたしがあわあわしているうちにベッドがもぞもぞしだした。


もしかして起こしちゃった?



「う~ん...」


「はーちゃん!」



彼の大声に藤宮さんはぴくっと一瞬だけ反応したが、どうやら起こしてはいないようだ。



「桐生さん。ここは私に任せて少しだけ外に出ていただけませんか?」



先生がわたしに目配せしてくる。


わたしも目で頷くと、彼に視線を移した。



「わたしが今日見たことをお話しいたしますので、隣の会議室に行きましょう」



彼は名残惜しそうに藤宮さんを見つめていたが、覚悟を決めたように背を向けた。



「お手数おかけしますが、よろしくお願いします」
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