嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編
会議室に入ると、わたしは真っ先にカーテンを締め切った。



「あの、どうしてカーテンを?」


「男性と2人きりでいると、誰かさんに何か言われかねないので」



わたしがはっきりとそう答えると彼はくすっと笑った。



「正直な方ですね」



わたしはこくりと首を動かした。



「はい。誠に正直な者です」



と、茶番はこのくらいにして、わたしは昼休みの出来事を話した。


彼...えっと...桐生さん?はわたしの話をものすごく真剣に聞いていた。


その眼差しから伝わってきたのは、ほんわりと温かい気持ちだった。


あぁ、きっと桐生さんにとって藤宮さんはとっても大切な人なんだなぁ。


そう思った。


わたしが話し終わると、桐生さんは言葉を1つ1つ丁寧に紡ぐように話し出した。



「はーちゃんとは家が近所で、産まれた病院も一緒で、物心ついた時には仲良くなってた。小さい頃からはーちゃんのこと見てきたのにいじめられてるなんて全然分からなかった。こんなやつ、はーちゃんに会う資格ない」


「桐生さん...」



落ち込んでいる桐生さんを見て、わたしは彼を思い出した。


わたしは彼の気持ちを汲み取って行動出来ていただろうか。


もう今となっては分からない。



「本当にありがとう。そういえば、名前は?」


「わたしは藤宮さんと同じクラスの星名湖杜と申します」


「もしかしてミスコンを辞退した...?」


「はい、その通りです」



桐生さんは苦いものを食べてしまったような顔をした。



「なんか悪いこと聞いちゃった。ごめん」


「いえいえ。お気になさらず。わたし、色々とふっ切れているので」


「そうか、なら良かった。ちなみに俺は桐生颯輝(きりゅうはやて)。弓道部で一応主将やってます。これから練習あるからもういかなきゃならないんだけど、はーちゃんのこと、よろしくお願いします」


「はい、分かりました。では、行ってらっしゃいませ」



わたしがそう言うと、桐生さんはさっきみたいにくすっと笑った。


何か変なこと、言ったかな?



「星名さんもその口調?」


「ええ。血の繋がりのない方にはこのような話し方です」


「じゃあ、まだマシだ。はーちゃんは家族にも敬語だから。2人、すぐ仲良くなれると思うよ。はーちゃん、冷静沈着で優等生っぽいけど、ピュアですっごくかわいいから、仲良くしてあげて」


「もちろんです!拒まれても友だちになっちゃいますから!」



桐生さんはとびきりスマイルを見せてから立ち去った。
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