嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編
「星名さん...」
気付けばまたカーテンのこちら側にはわたしと藤宮さんしかいなくなっていた。
あちら側では園田さんが説明してくれているのだろう。
「助けていただき、ありがとうございました」
「いえいえ。それにしても、あの2人組、恐ろしかったですよね。スマホで録画して先生にも見せましたし、ダビングもしていただきました。証拠は十分なので何かしら処分が下されるでしょう」
「そこまでして下さったんですね...。本当にありがとうございます」
そんなに頭を下げなくても...。
っていうか、藤宮さんとわたしでは互いに謙遜しあって話が進まない気がする。
それではまずい。
気がついた方が直せばいいんだから、わたしがちゃんと話しかけなきゃ。
そう思い、とりあえず気になったことを質問してみる。
「あの...藤宮さん。大変聞きづらいのですが...どうしてあの方々に襲われたんですか?」
「あの方々は、私(わたくし)のファンでして...。片方の...矢神さんという方からしつこく交際を申し込まれておりまして、それを何度も断ったらあんなことに...。もう1人の方は、矢神さんの親友で、私との交際を諦めて、ルックスの良い矢神さんに希望を託したということらしいのですが、あまりにもわたしが拒んでいるため、脅しに来たのです。読者モデルの矢神葉汰を振るっていうことはどういうことだか分かってんだろうな、と。そう言われました」
読者モデル、か...。
本当に光蘭って、キャラ濃すぎじゃありません?
一般ピープルはいないのですか?
って、反応するのそこじゃないか。
「でも、星名さんが色々と手を尽くして下さったお陰で安心しました。実はずっと怖かったんです、誰にも話せなくて」
「藤宮さんのお役に立てて光栄です。では、落ち着いたところで帰宅の準備をしましょうか。バッグはお休みになられている間に持ってきておきましたので、あとは服装を整えるだけです」
藤宮さんは、ベッドから出ると猛スピードで準備を開始した。
寝ていたためシワがついてしまったスカートをパンパンパンと何回も叩き、シワを伸ばすとブラウスのボタンを一番上まできっちり締めた。
踊る大捜査線の青島刑事ばりの(例えが古いか...)華麗なブレザーさばきで着ると、バッグから鏡を取り出し、前髪を入念にチェックし始めた。
ここまで順調に来ていたのに一気にペースダウン。
前髪チェックにかなり時間を割いている。
「あの...藤宮さん?」
「すみません。前髪に命をかけているので...。先輩の前では尚更です!バッグの内ポケットに入っているスプレーを下さい」
「あっ...はい!」
他人のバッグを勝手に開けて良いものなのだろうか。
しかし、彼女のためにも躊躇などしていられない。
「失礼します!」
恐る恐る中を覗くと...。
ぎょ!
ざ、女子!
化粧ポーチにハンカチ、ティッシュ、ウェットティッシュ。
ここまでは分かりますが。
なんと...スプレーが2つ!
どんだけ~です!
「あの...これ、どちらですか?」
「こっちだよ」
ほえ?
...っあぁ!
なんと、あのお方が再登場していた。
全然気づかなかった。
さては、忍びの術か...。
さすが、弓道部。
あっぱれでござんす。
「はい、これでしょ」
「あっ...」
藤宮さんもお気付きになられたみたいだ。
「良かった、元気そうで。はーちゃんが元気じゃないと俺も...」
「"はーちゃん"って呼ばないで下さい!」
えっ?
えっ?
お二人、仲良しじゃないの?
幼なじみ、だよね?
「じゃあ、なんて呼んだら良いの?」
「あなたには呼ばれたくありません。それ、下さい。私、帰りますので」
「質問に答えないと返さない」
藤宮さんがスプレーを取ろうとすると、背の高い桐生さんが上にひょいっと持ち上げてしまい、なかなか取れない。
桐生さんは楽しそうだけど、藤宮さんが...。
はて...どうしましょ。
「ちょっと、君。いじめたら可哀想だよ。返してあげな」
「はい...」
森下先輩に言われ、舌打ちをしながらも渋々返す、桐生さん。
「僕たちが送って行くから、君は先に帰ってて大丈夫だよ。藤宮さん、嫌がってるし」
「でも俺、はーちゃんの家知ってますし...」
藤宮さんがギロリと睨む。
目力に負けたのか、桐生さんは練習着の入ったバッグと弓を持って大人しく部屋を出ていった。
「じゃあ、帰ろうか」
先輩の鶴の一声に後輩たちは従い、保健室を後にしたのだった。
気付けばまたカーテンのこちら側にはわたしと藤宮さんしかいなくなっていた。
あちら側では園田さんが説明してくれているのだろう。
「助けていただき、ありがとうございました」
「いえいえ。それにしても、あの2人組、恐ろしかったですよね。スマホで録画して先生にも見せましたし、ダビングもしていただきました。証拠は十分なので何かしら処分が下されるでしょう」
「そこまでして下さったんですね...。本当にありがとうございます」
そんなに頭を下げなくても...。
っていうか、藤宮さんとわたしでは互いに謙遜しあって話が進まない気がする。
それではまずい。
気がついた方が直せばいいんだから、わたしがちゃんと話しかけなきゃ。
そう思い、とりあえず気になったことを質問してみる。
「あの...藤宮さん。大変聞きづらいのですが...どうしてあの方々に襲われたんですか?」
「あの方々は、私(わたくし)のファンでして...。片方の...矢神さんという方からしつこく交際を申し込まれておりまして、それを何度も断ったらあんなことに...。もう1人の方は、矢神さんの親友で、私との交際を諦めて、ルックスの良い矢神さんに希望を託したということらしいのですが、あまりにもわたしが拒んでいるため、脅しに来たのです。読者モデルの矢神葉汰を振るっていうことはどういうことだか分かってんだろうな、と。そう言われました」
読者モデル、か...。
本当に光蘭って、キャラ濃すぎじゃありません?
一般ピープルはいないのですか?
って、反応するのそこじゃないか。
「でも、星名さんが色々と手を尽くして下さったお陰で安心しました。実はずっと怖かったんです、誰にも話せなくて」
「藤宮さんのお役に立てて光栄です。では、落ち着いたところで帰宅の準備をしましょうか。バッグはお休みになられている間に持ってきておきましたので、あとは服装を整えるだけです」
藤宮さんは、ベッドから出ると猛スピードで準備を開始した。
寝ていたためシワがついてしまったスカートをパンパンパンと何回も叩き、シワを伸ばすとブラウスのボタンを一番上まできっちり締めた。
踊る大捜査線の青島刑事ばりの(例えが古いか...)華麗なブレザーさばきで着ると、バッグから鏡を取り出し、前髪を入念にチェックし始めた。
ここまで順調に来ていたのに一気にペースダウン。
前髪チェックにかなり時間を割いている。
「あの...藤宮さん?」
「すみません。前髪に命をかけているので...。先輩の前では尚更です!バッグの内ポケットに入っているスプレーを下さい」
「あっ...はい!」
他人のバッグを勝手に開けて良いものなのだろうか。
しかし、彼女のためにも躊躇などしていられない。
「失礼します!」
恐る恐る中を覗くと...。
ぎょ!
ざ、女子!
化粧ポーチにハンカチ、ティッシュ、ウェットティッシュ。
ここまでは分かりますが。
なんと...スプレーが2つ!
どんだけ~です!
「あの...これ、どちらですか?」
「こっちだよ」
ほえ?
...っあぁ!
なんと、あのお方が再登場していた。
全然気づかなかった。
さては、忍びの術か...。
さすが、弓道部。
あっぱれでござんす。
「はい、これでしょ」
「あっ...」
藤宮さんもお気付きになられたみたいだ。
「良かった、元気そうで。はーちゃんが元気じゃないと俺も...」
「"はーちゃん"って呼ばないで下さい!」
えっ?
えっ?
お二人、仲良しじゃないの?
幼なじみ、だよね?
「じゃあ、なんて呼んだら良いの?」
「あなたには呼ばれたくありません。それ、下さい。私、帰りますので」
「質問に答えないと返さない」
藤宮さんがスプレーを取ろうとすると、背の高い桐生さんが上にひょいっと持ち上げてしまい、なかなか取れない。
桐生さんは楽しそうだけど、藤宮さんが...。
はて...どうしましょ。
「ちょっと、君。いじめたら可哀想だよ。返してあげな」
「はい...」
森下先輩に言われ、舌打ちをしながらも渋々返す、桐生さん。
「僕たちが送って行くから、君は先に帰ってて大丈夫だよ。藤宮さん、嫌がってるし」
「でも俺、はーちゃんの家知ってますし...」
藤宮さんがギロリと睨む。
目力に負けたのか、桐生さんは練習着の入ったバッグと弓を持って大人しく部屋を出ていった。
「じゃあ、帰ろうか」
先輩の鶴の一声に後輩たちは従い、保健室を後にしたのだった。