嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編
「ねえ、波琉くん。波琉くんってテストはいつなの?」


「えっと...」



オレが手帳を開いて予定を確認していると、汐泉が覗き込んでくる。



「12月7日じゃん。その後は何も予定無いんだね」


「うん、まあ」


「じゃあさ、クリスマスにスキー行かない?」


「えっ?」



スキーは生憎両親がいた頃に1回しか行ったことがない。


3、4歳くらいだったから、その時のことはあまり覚えていない。


しかも、確かやったのはソリだけだ。


スキーは初体験となる。



「費用はあたしが負担するから、付き合ってほしい。去年行けなかったから今年こそはどーしても行きたいんだ。だからお願い!」



オレには断る理由などない。



「分かった、行こう。費用は普通に自分の分は自分で出すよ」


「行ってくれるの?じゃあ、本当に全額負担するね。付き合ってもらうんだから当然だよ」


「でも...」


「いいからいいから。私が出したいんだから、甘えちゃいなよ」



オレは仕方なく頷いた。


汐泉はなかなかの頑固者だから、はいと言わないと一生終わらない。


さすがに8ヶ月も付き合えば色々分かってくる。



「よーし。そうと決まれば私も頑張らなきゃ。テストあたしの学校は7日からなんだよね。あっ、そうだ!良かったら一緒に勉強しない?学校終わったらこっちに来てカフェで勉強しよう」



また頷く。



「分かった。よろしく」


「波琉くんは頭良いから助かるよ!私、看護師になりたいんだけど、理系がちんぷんかんぷんだから教えてもらえたら助かる」


「うん、出来る範囲で教えるよ」



なんて答えたものの、オレの中には感情がない。


今、嬉しいのか悲しいのか楽しいのかなんなのか全く分からない。


開いた穴は想像以上に大きくて、オレはその穴を埋められずにいた。


こんなにも自分が分からなくなるのは、両親を失った時以来だった。


唯一感じられること。


それは...


オレにとって


星名湖杜は、


確かに


オレを形成するワンピースだったということ。


欠けてはならない、大切なワンピースだったんだ。


気付いてもどうしたらいいのか分からない。


取り戻すことが出来たとしてもそれが正解かなんて分からない。


なあ、星名。


オレ、どうしたらいい?


どうすれば星名はまた笑ってくれるかな。
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