嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編
ある日の帰り道だった。


自転車がプシューっとすっとんきょうな音を鳴らした。


ったく、なんでこうなるかな。


時刻はまもなく6時半。


急がないと自転車屋が閉まってしまう。


オレは自転車を押しながら、必死に歩いた。


今日汐泉と会うのは10時だ。


一緒に勉強はしないみたいだが、会いには来てほしいらしい。


これを面倒だと言えば、あいつに怒られるだろう。


分からないと思っていた女心も今となれば分からなくてもいい気がする。


そんなのどうだっていい。


投げ出したい。


はあ。


ため息が白いもくもくとなって一瞬で消えた。


もう季節は冬なんだ。


ふと視線をずらすと、枯れ木と...あいつが目に入った。



「星名?」



百合野と白鷺と3人で歩いていた。


楽しそうだった。


星名はオレがいない空間でオレのいない時間を笑って過ごせている。


だったら、いいんじゃないか。


このままでも、いいんじゃないか。


オレがあいつを必用としているだけで、あいつはそうではないのだ。


オレがいない方が笑っていられるんだ。


微かに声が聞こえてくる。


白鷺はオレに気付いたみたいだ。


必ず星名はこっちを見てくる。


振り返っちゃダメだ。


振り返っちゃ、ダメなんだ。


オレは...あいつを笑顔に出来ないから。


ハンドルをぐっと握り、泣きたくなるのを必死に堪えた。


ゆっくりゆっくり歩いていく。


そのうち、力が抜けてほわーんとした気分になってくる。


糸がプツンと切れたように感情が再び無くなった。


オレは歩いた。


歩き続けた。


自転車屋に着いた時には手が真っ赤になってジンジンと痛んだ。
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