嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編
Ⅲ ウィンター・ラブ
長い長い戦いが終わった。
わたしは机に突っ伏し、心の中できゃほーんと呟く。
ちょっと寝不足。
今すぐ寝たい。
「テスト終わりましたね」
「みんなお疲れー」
園田さんと藤宮さんがわたしの席に来て労いの言葉を掛け合う。
「ねえ、これからどっか行かない?」
「申し訳ありませんが、わたし、お店の手伝いがあるので今日はちょっと...」
「お店?」
藤宮さんが首を傾げる。
斜めになっても前髪は崩れない。
ワックスとかスプレーとか、どれだけやればこんなにガッチガチになるのだろう。
わたしも首を傾げた。
「ちょっとちょっと、2人して何?」
「私は星名さんのお店という意味が分からなかったので...」
「わたしは、藤宮さんの前髪はどうなってるんだろうなって思って...」
園田さんはお腹を抱えて大笑いした。
何がそんなにおもしろいのかさっぱり分からず、わたしは藤宮さんと顔を見合わせた。
「なんか2人、ふくろうみたいなんだもん。笑っちゃうよ!」
「ふくろう、ですか?」
「お願い、首傾げないで!腹筋崩壊しちゃう」
ツボに入ってなかなか抜け出せない園田さんは置いといてわたしは藤宮さんに説明した。
「わたしの父は祖母の後を継いで食堂をやっているんです。わたしと父の2人で切り盛りしているのでそれなりに忙しいんです」
「そうだったんですか。実は私の祖母も書道教室を開いていて、冬場は書き初めの宿題があるので小学生の生徒さんが増えるんです。私も星名さんほどではないと思いますが忙しいのは確かです」
お互いに身の上話をしていると、笑いをなんとか収めた園田さんがスマホを見せてきた。
「2人共忙しいみたいだから今日は断念する!その代わりクリスマスは予定開けておいて!」
スマホの画面を見るとそこには"カラオケじゃんじゃん、予約完了"の文字が...。
なんということ!
カラオケなんて産まれて1度も行ったことない!
「あのあの、わたしとっても音痴でして。皆様にお聞かせ出来るような歌を歌えるかどうか怪しいのですが...」
「別にいいじゃん。羽鳥ちゃんとあたしだけなんだから」
「私もあまり歌は上手くないので、心配なさらなくても大丈夫ですよ」
そうは言われてもわたしには苦い経験があるんだ。
中学校の合唱コンクールの練習中。
わたしは指揮者の男子からはっきりいわれたんだ。
音痴は歌わないで、と。
はっきり言われるとさすがのわたしも落胆してしまい、数週間引きずっていた。
それからというもの、わたしは口パクを貫くことにしたのだ。
歌わなくて良いのは幸い中の不幸だった。
音楽の歌のテストでは普段歌っていないので歌詞さえもあやふやで口パクが先生にバレ、音楽の成績は壊滅的。
他が出来ていても音楽が悪いせいでわたしは1度も学年1位の成績になれずに卒業したのだ。
まあ、それと同じくらい体育もヤバかったのだけれど。
「盛り上がれば歌唱力なんて気にならないよ。大丈夫。絶対楽しいから!ああ、今から楽しみすぎる~!早くクリスマスにならないかなあ...」
とわたしたちがクリスマスの予定で大いに盛り上がっている所に、あの子がやって来た。
「百合野ちゃん、帰ろう」
今日は2人共部活がお休みらしい。
「じゃあ、ことちゃんも羽鳥ちゃんも一緒に帰ろう」
と園田さんは言ってくれたが、
「たまにはお二人で帰られてはいかがですか?私たちのことはお気になさらず、お二人の時間を大切にしてください」
と藤宮さんが気を利かせていってくれた。
確かにそうだ。
結ばれた2人の邪魔ばかりしていられない。
この2人が結婚したら園田さんと居られる時間はほぼ消滅してしまうんだ。
今のうちに慣れておかなければ...。
「2人の時間を大切にしてください。わたしたちは大丈夫なので」
「じゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらうわ」
「こと先輩、藤宮先輩、ありがとうございまっす!遠慮なく独占させていただきまっす!」
白鷺くんは園田さんの腕を勢いよく引き、そのままかっさらっていった。
園田さんが白鷺くんの背中をバシバシ叩きながら去っていくシーンはまさに青春だと思いながら見ていた。
わたしは机に突っ伏し、心の中できゃほーんと呟く。
ちょっと寝不足。
今すぐ寝たい。
「テスト終わりましたね」
「みんなお疲れー」
園田さんと藤宮さんがわたしの席に来て労いの言葉を掛け合う。
「ねえ、これからどっか行かない?」
「申し訳ありませんが、わたし、お店の手伝いがあるので今日はちょっと...」
「お店?」
藤宮さんが首を傾げる。
斜めになっても前髪は崩れない。
ワックスとかスプレーとか、どれだけやればこんなにガッチガチになるのだろう。
わたしも首を傾げた。
「ちょっとちょっと、2人して何?」
「私は星名さんのお店という意味が分からなかったので...」
「わたしは、藤宮さんの前髪はどうなってるんだろうなって思って...」
園田さんはお腹を抱えて大笑いした。
何がそんなにおもしろいのかさっぱり分からず、わたしは藤宮さんと顔を見合わせた。
「なんか2人、ふくろうみたいなんだもん。笑っちゃうよ!」
「ふくろう、ですか?」
「お願い、首傾げないで!腹筋崩壊しちゃう」
ツボに入ってなかなか抜け出せない園田さんは置いといてわたしは藤宮さんに説明した。
「わたしの父は祖母の後を継いで食堂をやっているんです。わたしと父の2人で切り盛りしているのでそれなりに忙しいんです」
「そうだったんですか。実は私の祖母も書道教室を開いていて、冬場は書き初めの宿題があるので小学生の生徒さんが増えるんです。私も星名さんほどではないと思いますが忙しいのは確かです」
お互いに身の上話をしていると、笑いをなんとか収めた園田さんがスマホを見せてきた。
「2人共忙しいみたいだから今日は断念する!その代わりクリスマスは予定開けておいて!」
スマホの画面を見るとそこには"カラオケじゃんじゃん、予約完了"の文字が...。
なんということ!
カラオケなんて産まれて1度も行ったことない!
「あのあの、わたしとっても音痴でして。皆様にお聞かせ出来るような歌を歌えるかどうか怪しいのですが...」
「別にいいじゃん。羽鳥ちゃんとあたしだけなんだから」
「私もあまり歌は上手くないので、心配なさらなくても大丈夫ですよ」
そうは言われてもわたしには苦い経験があるんだ。
中学校の合唱コンクールの練習中。
わたしは指揮者の男子からはっきりいわれたんだ。
音痴は歌わないで、と。
はっきり言われるとさすがのわたしも落胆してしまい、数週間引きずっていた。
それからというもの、わたしは口パクを貫くことにしたのだ。
歌わなくて良いのは幸い中の不幸だった。
音楽の歌のテストでは普段歌っていないので歌詞さえもあやふやで口パクが先生にバレ、音楽の成績は壊滅的。
他が出来ていても音楽が悪いせいでわたしは1度も学年1位の成績になれずに卒業したのだ。
まあ、それと同じくらい体育もヤバかったのだけれど。
「盛り上がれば歌唱力なんて気にならないよ。大丈夫。絶対楽しいから!ああ、今から楽しみすぎる~!早くクリスマスにならないかなあ...」
とわたしたちがクリスマスの予定で大いに盛り上がっている所に、あの子がやって来た。
「百合野ちゃん、帰ろう」
今日は2人共部活がお休みらしい。
「じゃあ、ことちゃんも羽鳥ちゃんも一緒に帰ろう」
と園田さんは言ってくれたが、
「たまにはお二人で帰られてはいかがですか?私たちのことはお気になさらず、お二人の時間を大切にしてください」
と藤宮さんが気を利かせていってくれた。
確かにそうだ。
結ばれた2人の邪魔ばかりしていられない。
この2人が結婚したら園田さんと居られる時間はほぼ消滅してしまうんだ。
今のうちに慣れておかなければ...。
「2人の時間を大切にしてください。わたしたちは大丈夫なので」
「じゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらうわ」
「こと先輩、藤宮先輩、ありがとうございまっす!遠慮なく独占させていただきまっす!」
白鷺くんは園田さんの腕を勢いよく引き、そのままかっさらっていった。
園田さんが白鷺くんの背中をバシバシ叩きながら去っていくシーンはまさに青春だと思いながら見ていた。