嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編
その後も、藤宮さんたちを見失わない程度に楽しみながら時間を過ごした。


そして、神社に来て2時間ほど経った頃、遂に動きがあった。



「藤宮さん、今なんか言った!」


「神社を出るみたい」


「尾行しますか?」


「もちろん!」



満場一致で尾行開始。


と、思ったその時。



「星名さん」



もしや、もしや、もしや...。


恐る恐る振り返る。



「あっ...。明けまして...おめでとうございます...桐生...さん」



あなたは来ちゃだめ!


なんでバッドタイミングで来ちゃうかな?


今日は本当に来ては行けなかったよ。


藤宮さんが一大決心したというのに...。


わたしも辛いから、お願いです。


諦めて下さい!



「ちょうど良いところに来たよ、羽鳥ちゃんのストーカーさん」


「そ、園田さん?!」



わざわざ火に油を注ぐようなことを言わなくても...。


白鷺くんなんてあわあわしちゃって左右をキョロキョロしてるよ。



「今日はあなたに現実を突き付けたいと思います。ぜひご同行お願いします」


「園田さん、それはまずいです」



わたしが小声で耳打ちしていると、桐生さんが歩き出した。



「俺は何があっても諦めないって決めてるんで。最初の女も最後の女もはーちゃんじゃなきゃ嫌だから」


「うわっ。めっちゃ、かっけー!さすが、弓道部主将!」


「こら、誉めてる場合じゃないでしょ!さっさと行くよ!」



園田さんに頭をポカンとされて痛がるふりをする白鷺くん。


夫婦漫才を見てるみたいで楽しい。


なんて言ってる場合じゃないか。


わたしはすかさず桐生さんの隣に並んだ。



「あの...桐生さん」


「何?」


「そのぉ...いつまで藤宮さんを追いかけるつもりかと...」


「一生。死んでもまた生まれ変わって、その時の一生も。つまり、永遠」



いやぁ、これはエンドレスだ。


本当にどうしよう...。


ストーカーで逮捕されかねないよ。


わたしたちが止めてあげないとやばい方向に進んでそのうち...。


あぁ、寒気がする。



「どうしてそこまで...」


「あっ!羽鳥ちゃん、あそこに入ってく!」



次の質問に移ろうとしたら、藤宮さんが公園に入っていった。


元気そうに遊ぶ子どもたちが数組いるが、どうやらこれから初詣らしく、親たちが公園に向かって歩いてきていた。


子どもたちはいなくなる。


ということは、公園で2人きりになる。


やっぱり、狙ってる。


藤宮さん、告白するんだ。


わたしたちは2人の邪魔をしないように、茂みに隠れた。


太陽が当たってないから寒い...。


早くして~。



「星名さん、これ、羽織って下さい」


「ほえ?」



桐生さんが紙袋からポンチョを出してきた。


それをわたしの肩に掛けてくれる。


や...優しい。


気を遣える方なんだね。



「やっぱすげえっすよ、桐生先輩。こんなの持ってるなんて女子より女子力高いっすよ!」


「何それ?あたしに向かって言ってんの?」


「別にそんなんじゃ...。百合野ちゃん、気を悪くしちゃったならごめん」



白鷺くんが園田さんに必死に謝っている横で、わたしは桐生さんにお礼をした。



「ありがとうございます。でも、これどうしたんですか」


「これ、はーちゃんに買ってあげたんだけど、受け取ってもらえなかったんだ。今日も着物だけだから寒いかなと思って持ってきたんだけど...」


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