嵐を呼ぶ噂の学園④ 真冬でもあったかいのは愛です!編
オレは星名の腕を強引に掴み、星名食堂方面に少し歩き、人気のないところにやって来た。


はあ...はあ...。


もうダメだ。


心臓がもたない。


早くしないと...。



「青柳くん...渡したいものとは?」


「あっ、はい。ははあ...その...」


「大丈夫ですか?冬だというのに汗が...」



星名がハンカチを取り出し、オレの額を拭いてくれた。


そういうのも、違反だ。


その一挙手一投足がオレを蝕んでくんだ。


今だって、ほら。


ヤバイんだよ。


オレが壊れそうになる。



「はい、では、改めて。ご用はなんですか?」



しゃべったら、まずい。


オレはカバンから袋を取り出し、星名の目の前に差し出した。



「これ、やるよ。星名、今日誕生日だろ?」


「わたし、誕生日のお話しましたっけ?」


「そんなのどうでもいいだろ。とにかく受け取ってくれ」



星名は手袋を外し、凍えそうな手でオレからのプレゼントを受け取った。


今この瞬間、1番ほしいのはホッカイロのような気がした。



「あのぉ...開けてもよろしいですか?」


「星名のなんだから、好きにしていい」



ゆっくりと紙袋のテープを剥がし、さらに小分けされた袋のテープも剥がした。


オレの心臓は爆発寸前。


はあ...。


苦しすぎる。


本当は駆け出したいけど、一応反応を確認してから去ろう。



「うわぁ!お星様きらきらって感じで素敵です!で、こちらは...」



星名がネックレスを手に取る。


その瞬間、星名の目から涙がこぼれた。



「おい、なんで泣くんだよ」


「嬉し過ぎます。幸せ過ぎます。こんなに素敵なプレゼントをもらったのは初めてです...」


嬉し泣き。


オレにとっても最高のプレゼントだ。



「星名、ちょっと後ろ向いて」


「えっ...?」


「いいから、早く」



オレは星名の手からネックレスを取って首からかけてあげた。



「はい、回れ右」



ああ...。


やっぱり、


やっぱりイメージ通りだ。



「いい。すっごく似合ってる」


「そうですか?」


「何度も言わせんな。オレは...」


「1度言ったことは2度と言わない」


「分かってんじゃん」


「はい。青柳くんのことはかなり分かってきたつもりです」



星名が笑う。


ネックレスを何度も見ては微笑みかけてくる。


次、こっちを見たら...


その時は...。



「本当にありがとうございます」



来た。


今だ。



「星名、あのさ...」


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