嘘つき社長と天使の恋物語

(あんた、まだ素直にならないの? )


 また声がして悠大は振り向いた。


 しかし誰もいない。


「なんなんだ? 空耳か? 」


 一息ついて、悠大はソファーに座った。



(嘘つき男は嫌われるよ)


 また声がした。

 周りを見渡しても誰もいない。

 また空耳かと、悠大はため息をついた。



(ためいきついて、いつまで悲劇のヒーロー演じているわけ? )

 
 またか・・・

 悠大は自分が相当疲れているのだと思った。


(ねぇ、顔上げてよ。・・・ちゃんと、前見てよ)


「全く・・・なんなんだ? 」

 と、悠大が顔を上げると・・・。


「えっ? 」


 悠大が顔を上げると、そこには写真縦の写真に写っている髪の長い女性がいた。

 写真のままの姿で、服も紺色のティーシャツに白いジーンズ姿。


 悠大は目をパチクリさせた。


「なに? もうお昼過ぎているのに、まだ目が覚めない? ずっと部屋にこもって、パソコンばかりやっているから? 」


 悠大はじっと目の前の女性を見つめた。


「お前・・・誰なんだ? 」

「え? 嫌だぁ。もう忘れたの? 私の事」

「まさか・・・サキなのか? 」

「そう、覚えてくれていたのね? 良かった」


 信じられない顔をしている悠大に、悪戯っぽく笑うサキ。


「何驚いているの? あんたが、いつまでも離してくれないから。私、成仏できないままなんだけど」


「何を言っているんだ? もう、13年もたっているんだぞ」

「そう、13年もたっているの。それなのに、いつまでもあんたは前を見ない。確かに愛する人が居なくなれば、悲しいわよ。悲しみが簡単に癒されない事も、知っているわ。でも長すぎでしょう? あんたが離してくれないから、不幽霊みたいにここに引き止められているの。分かる? 」

「私が、お前を引き止めていると言うのか? 」

「そうよ、どんな形で死んでも。それは、私が決めて来た事。もう、人生を全うしているの。13年も引き止められているんじゃ、次の人生楽しめないじゃない? だから、もういい加減に離してほしいから。こうして、あんたの前に出て来たの」


 サキはふーッと一息ついた。
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