嘘つき社長と天使の恋物語
 
 深夜を回る頃に悠大が帰ってきた。



 嶺亜は早めに休むと言って寝てしまった。


 和也は、どうしても嶺亜がマスクをずっと着けていたのが気になっていた。


 
 悠大は深夜に帰ってきて、お風呂を済ませてから部屋でまた仕事をしている。



 和也はうとうとと寝ていたがハッと目が覚めた。


 何かが見えるようで、じっと窓際を見ている和也。


「・・・ねぇ、そこにいるんでしょう? 」

 和也が声をかけると。

 スーっとサキが姿を現した。


「え? ・・・」


 和也は驚いた目をした。


「気づいてくれたのね、嬉しい」


 サキはとても優しい眼差しで和也を見つめた。


「なんで? ・・・ここにいるの? 」

「何を言い出すの? 貴方だって、どうしてここにいるの? 別の星で、生まれ変わったんじゃないの? 」

「・・・そうだけど・・・」


 少し潤んだ目をして和也は視線を落とした。


「私と同じ? もしかして、仕返しするつもり? あの人に・・・」

「・・・ああ。そうだよ・・・」


 潤んだ目で和也はサキを見つめた。
 

「どうして? 仕返ししても、何も変わらないでしょう? せっかく別の星で生まれ変わったのなら、そこで幸せになればいいじゃない」

「・・・母さんは、幸せになれたの? 」

「え? 」

「そのままの姿でここにいるって事は、幸せになれないからでしょう? 」


 サキはちょっとだけ辛そうな目をしたが、すぐに笑顔になり和也を見つめた。


「私はね。あの事故で死んでから、守護天使になっただけよ。人間としては、最後だって決めていたから。だからずっと、お父さんを見守っていただけよ」


 そう答えるサキの横顔がとても悲しそうに見えて、和也は胸が痛んだ。

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