嘘つき社長と天使の恋物語
「母さん何言っているの? あの、事故の時のままって事は。母さんは、一度も最上階に行ってないって事じゃん」
ギュッと唇を噛んで、サキは何も言わない・・・。
「あの事故の相手が許せないからでしょう? 」
「違うわよ・・・。お父さんが、離してくれないからよ。・・・ずっと、13年たっても死んだこと認めてくれないし。引き止められているの。だから・・・守護天使になるしかないでしょう? 」
「それは違うよ。俺は、まだ小さくて良く分らないままだったけど。生まれ変わっても、前世の記憶が消えないままだった。ずっと原因不明の病気にばかりかかって、幸せになるところか、苦しいままだよ。今、俺の体はずっと意識のままだよ。夢にまで見ていたから、前世で引き殺された事を。だから・・・あいつに仕返ししてやらないと、俺は生まれ変わっても幸せになんてなれないんだよ! 」
「一樹・・・」
サキは悲しそうな目で和也を見つめた。
「言いたい事は分かっている。この世に未練を残さないで、決めた人生を全うしただけなんだ。・・・だけど俺は・・・もっと、父さんと一緒にいたかったよ。・・・」
潤んでいた和也の目からスッと涙がしたたり落ちた。
サキはそっと和也を抱きしめた。