嘘つき社長と天使の恋物語
カチャッとドアを開けて1人の男が入って来た。
「ヒーッ! 」
倒れている男性と女性を見て、男は驚き腰を抜かしてその場にしゃがみこんだ。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。
腰を抜かして逃げたくても逃げれない男。
暫くして、警察官が入って来た。
男は有無も言わさず連れて行かれた。
外で隠れていた芹那は不敵に笑い、返り血を浴びた男性用のコートをごみ箱に捨てて去って行った。
「こ、こんなの見せて。なに? あの2人を殺した犯人は、捕まっているのよ! 」
「そう。誤認逮捕だけどね」
「誤認逮捕って、警察はあの男が犯人だって言ったのよ! 」
「その時はね。でも今は、誤認逮捕だってちゃんと分かったようだよ。だから、あの男の人は釈放されているよ。あの人は、ただ、用があって来た来客だったって証明されたんだって。ある人が、ちゃんと証拠を持っていたようだよ」
芹那はある人と聞いてピンときたようだ。
「またあの子ね…余計な事ばかりして…」
「余計なことしているのは、あんたじゃん」
「はぁ? 私が? 」
和也はフッとため息をついた。
「あんた、寂しい人なんだね」
「私が? 何を言ってるの? 」
和也は芹那の顔を覗き込んだ。
「あんたさっ、俺とセックスしたら幸せになれるのか? 」
「セックスに幸せも何も、あるわけないじゃない。あるのは快楽だけ。みんなそうでしょう? 好きだの、愛だと言ってるけど。そんな言葉を言われて、その相手とセックスしても全然気持ち良くないって知っているから」
「ふーん。そうなんだ、あんたにも愛しているって言ってくれる人が居たんだね」
「いたわよ。でも、最後には私の事を裏切ったわ」
「もしかして、さっき殺しちゃった人? 」
「さぁね…。もう忘れたから」
「そっか。そんな事があったんだ。それで、あんたはお金に走ったってわけなんだ」
「お金は裏切らない。お金さえ出せば、性欲を満たしてくれる人はいるし。相手にしてくれる人だっているもの」
ポンと、和也は芹那の肩に手を置いた。