嘘つき社長と天使の恋物語

 夫を殺してそのまま実家である家に帰ってきた芹那。

  
 夫のコートを借りて家に帰って来ると。


「芹那、どこに行っていたんだ? 探していたんだぞ」

 父親が怒った顔で出て来た。

 
 こいつも私を責めに来たんだ…。

 芹那はそう思った。


「芹那、ひき逃げしたって本当なの? 」


 後からやって来た母親が言った。


 またこいつも私を責めている…。

 こいつらは、どうせ私の本当の親ではない。

 可愛いなんて思っていないんだから…。


 芹那は鼻で笑った。

「ひき逃げしたって? それがどうしたの? それで、私を責める? 」


「芹那、何を言い出すんだ。私達は、事実を確認しているだけだ」

「そうよ芹那。そりゃ、突然の事で驚いたんだと思うの。でも、どうして逃げたの? 」

「別に。逃げたかったから、逃げただけよ。悪い? 」


 悪びれる事もない芹那に、父も母もまた怒りの目を向けた。


 その目を見て芹那は不敵に笑った。


「責めたければ、勝手にどうぞ。どうせ私は、あんた達の本当の子供じゃないから。可愛くもないんでしょう? 」


「誰がそんな事言っている? 」

「そうよ、亡くなった貴女のお母さんにも、娘をお願いしますってお父さんは頼まれているのよ」

「そうだ。お前を可愛くないなんて、思った事はない」


「嘘! いつも、嶺亜ばかり可愛がってるじゃない! 嶺亜は、あんた達の本当の子供だから可愛いんでしょう? 私はどうせ、連れ子だもの。あんた達とは血が繋がっていないから。邪魔なんでしょう!! 」


 と、芹那は隠し持っていた包丁を取り出し、父と母に突き付けた。


 驚き、恐怖に引きつった顔をする父と母を見ると、芹那は不敵に笑った。


「面白いわね、そうゆう顔って。怖がって、助けを求める顔って最高に面白いわ」


 笑いながら、包丁を突き付けて父と母に詰め寄ってゆく芹那。


「芹那、待ちなさい」

「ま、待って芹那。私達を殺しても、何も変わらないわ」


「うるさい! あんた達なんて、死ねばいいのよ! 」


 グサッ!!

 勢いよく、芹那は父と母の腹部を刺した。


 
 コートに返り血を浴びて、手には血の付いた包丁を持って。

 芹那は渇いた笑いを浮かべていた。



 チャイムが鳴った。


 芹那は裏口から、外へ逃げて行った。

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