嘘つき社長と天使の恋物語
和室。
いつも和也が使っている部屋で、今まで荷物が置いてあったが、その荷物がなくなっていた。
布団は綺麗にたたんで端っこに置かれている。
と…。
窓際に誰かが立っている。
和室のドアを開けて、悠大と嶺亜が入って来た。
「あれ? 誰もいないな」
「和也君の荷物も、ないですね」
「どうしたんだ? 」
2人が驚いていると。
「もう、和也さんはいませんよ」
ちょっと低めの爽やかな声がした。
その声は窓際から聞こえた。
悠大と嶺亜が声がした方を見ると…。
「え? 」
悠大はとても驚いた顔をした。
嶺亜は一瞬だけ驚いたが、すぐに笑顔になった。
窓際にはとても綺麗な青年が立っていた。
スラッとして、とても背が高い青年。
髪は綺麗なブロンドで、ほっそりした面長の顔に高い鼻、切れ長の目で瞳は綺麗な緑色。
透明感のある白い肌で、見ているとうっとりさせられる。
かっちりした紺色のスーツ姿が、とても凛々しい。
「君は…誰なんだ? 」
悠大が尋ねると、青年はクスッと笑った。
「和也君…ううん…一樹君でしょう? 」
嶺亜が尋ねると、青年はそっと頷いた。
「え? 一樹? だって、一樹は和也君に…」
「和也さんの体は、もうお返ししました。彼も、目を覚ましたいって言っていましたから。だから、本来の僕の姿で最後にお会いしたくて待っていました」
和也の時とは全然違う。
言葉使いも丁寧で、物腰も低くてとても上品。
仕草も優しくて、まるでどこかの皇子様の様である。
「一樹…本当に、一樹なのか? 」
悠大の目が潤んだ。