嘘つき社長と天使の恋物語
「はい、僕の前世は貴方の息子で一樹と言う名前でした。でも今は、こことよく似ている環境ですが、もっと未来に発展している別の星で生まれ変わって、違う名前で生きています。ちょっと、病気で倒れてしまいエネルギーだけ移動して。今まで和也さんの体を、お借りしていただけです。このままの姿では、随分と驚かれてしまうと思いましたので」
「そうだったのか。だがお前、随分とカッコいいんだな。びっくりしたよ」
「当然ですよ、僕は。お父さん…貴方のDNAを受け継いで、来世に行きましたから。こうして、素敵な男性になれたのです。有難うございます」
「一樹…今は、何て名前なんだ? 」
「ごめんなさい。未来の名前は、教えることはできないのです」
「そうか…」
「でも安心して下さい。今の、僕のお父さんは貴方に似てとても素敵な人です。そして…」
青年は嶺亜をそっと見つめた。
「嶺亜さん。今、僕の心から愛する人は、貴女にそっくりな人です」
「私に? 」
「はい。…僕のいる星は、こことは流れが違います。ここでの1日は、僕の星では3ヶ月は過ぎています。寝ている間に、体に戻ってはいましたが、そろそろ帰らなくてはなりません。多くの人が、僕の事を待っているんです。今日、ここでお待ちしていたのは、僕の最後の役目を果たす為と。嶺亜さんのお姉様から、伝言を預かっていましたので。それをお伝えする為に、待っていました」
「姉さんと、会ったのですか? 」
「ええ、昨日お会いしました。そして、全てを認めてくれましたよ。嶺亜さんのご両親の事も、全部です」
嶺亜は辛そうに、そっと視線を落とした。
「嶺亜さん、もう何も心配しないで下さい。全て、僕が終わらせましたから。お姉様も心から改心して、自首されましたよ」
「え? 自首したんですか? 」
「はい。お姉様が自分から、選んだ道です。その時に、嶺亜さんに伝言を頼まれましたので、お伝えしても宜しいでしょうか? 」
「は、はい…」
「お姉さんは嶺亜さんに「ごめんね」「ありがとう」と伝えて欲しいと言われました。ずっと、嶺亜さんが味方で居てくれた事が、嬉しかったようですよ」
「…姉さんが…」
目が潤んで、嶺亜はそっと顔を背けた。
そんな嶺亜を、悠大がそっと抱き寄せた。