嘘つき社長と天使の恋物語

 すると

 足音が近づいてきた。


 悠大はハッとして、和也を脱衣所に連れ込んだ。


「わぁ、何すんだよ! 」
 
 と、叫ぶ和也の口を悠大は手で塞いだ。




「あれ? 和也君? お風呂まだ入っているの? 」

 嶺亜の声が聞こえてきた。


 悠大は息をひそめて様子を伺っている。



「声がしたから上がったと思ったんだけど、まっ、いいか」


 嶺亜はそのまま去って行った。


 足音で嶺亜が居なくなったのを確認すると、悠大はホッとした。


 手が口から離れると、和也はじっと悠大を見つめた。



「ふーん。もしかして、姉ちゃんに気を使ったのか? 」

「え? 」

「俺が全裸でいたら、姉ちゃんすげぇ驚くだろう? 」

「そ、そうではない。だが、いくら家の中でも真っ裸で歩くものじゃないだろう? 」

「ん、まぁそうだけど。仕方ねぇじゃん、パンツ部屋に忘れてたし」

「だったら、誰かに取ってもらえばいいじゃないか」

「ふーん。姉ちゃんに頼んでいいのか? 俺のパンツ持って来てって」

「はぁ? 」


 悠大はなぜか赤くなった。


「何赤くなってんの? そんなに心配ならさっ、ちゃんと見てやれよ姉ちゃんの事」


 言われて悠大はハッとなった。


 何をこんなに慌てているのだろう? 
 何故、隠そうとしたのだろう?
 何も干渉していないのに、別に何ともない筈なのに・・・。


 複雑な気持ちが込みあがってきて、悠大は自分でも判らなくなった。


「ったく、相変わらず素直じゃないんだな」

 と、立ち上がり和也は脱衣所を出ようとした。


「ちょっと待て! そのまま行くな。私が持って来てやるから、ここにいるんだ」

「あ、そう? じゃあ頼むよ。ちなみに、パンツは一番奥からとってきてくれよっ」

「ったく・・・。分かった」

 
 去ってゆく悠大を見て、和也はニヤッと笑った。

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