2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
『…今日は…』


そう言って、樹さんは前を向いたまま黙った。


ハンドルを握る手。


細くて長い指が、とっても素敵。


私は、そのまま視線を少しあげて、樹さんの横顔を見た。


鼻から口元、そしてあごへのラインが嘘みたいに綺麗だ。


そして、瞳も…


私は前を向いて、ゆっくりと深呼吸した。


似てるけど、この人は…


そう、柊君じゃないんだ。


双子の弟。


弟の樹さん。


ちゃんと…


私は、柊君を忘れなきゃ。


でも…


樹さんを見てる限り、やっぱりそれは…


すごく難しいのかも知れない。


頭ではわかってるんだ、もう…


柊君とは元に戻れないって。


だけど、心が…勝手に疼くんだ…


柊君…


今、あなたはどうしてるの…?


どうか、寂しい夜を過ごさないで欲しい。


笑ってて欲しいよ…


だって、柊君の笑顔は本当に本当に優しくて、誰よりも素敵だったんだから。
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