2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
この人…


本当に…優しいんだな。


心の奥で、人の気持ちを考えて、自然に行動出来るんだろうなって、そう思った。


『もうすぐだな。食べたら、コート着て』


え?もうすぐって…


何だろう?


何が始まるの?


私は、期待に胸が弾んでいた。


コートを着て、手袋にマフラーで、私は車外に出た。


2人並んで、ガードレールの前に立って…


『あと、2分』


『何が始まるんですか?』


『もうすぐわかる』


そして、樹さんが言った通り、ちょうど2分後に、サプライズが始まった。


空にとても綺麗な、大輪の花が咲いたんだ。


『嘘!花火!』


あまりの感動に思わず叫んでしまった。


『ああ、冬の花火。これを柚葉に見せたかった』


次々に咲く、色とりどりで鮮やかな花火が、あまりにも綺麗だった。


私は…最後のデートで、柊君とは夜景が見れなかったけど、その代わりに、こんなにも素敵な物を見せてもらえた…


樹さんは、私のズタズタに傷ついた心をいつも優しさで埋めてくれる。


その温かい思いやりを、私は痛いほど感じて…嬉しくて涙が溢れた。
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