2人のあなたに愛されて～歪んだ溺愛と密かな溺愛～

樹さんは、本当に自然に、私の手を握った。


手を繋ぎながら、私達は、その場所で、ずっと花火を見ていた。


咲いては、すぐに消える、儚い花火達…


その一瞬一瞬の命に、精一杯の思いを乗せて…


30分間のラストは、真っ暗な空1面に大きく広がる、何発もの素晴らしい花火の競演だった。


感動で、さっきからずっとうるうるし過ぎて、言葉も出ない。


最後の花火が消える、その瞬間を見届けて…


私達は、2人で大きな拍手を送った。


『本当に…綺麗でした、ありがとうございました』


私は、涙を堪えて、言葉を絞り出した。


樹さんは、うなづいてから、車の後部座席にあった何かを取り出して、私に差し出した。


『これ、柚葉に』


『うわぁ、すごく綺麗！これを私に？』


それは、とても可愛らしい花束だった。


車の中の優しくて甘い匂い、この香りだったんだ…


『俺、女の子が何を喜ぶとか、本当わからないから、センスなくて悪い』


私は、首を大きく横に振った。


『…こんな素敵なクリスマス・イブを過ごせて…本当に…嬉しいです』