2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
『柚葉…』


樹さんが、私を見つめた。


『いろいろ、今は気持ちが定まらないかも知れない。でも…お前の気持ちが少しでも前に向けるように…』


1度目をそらせて、そして、また私を見て…


樹さんは、ゆっくりと、言葉を続けた。


『柚葉を…支えたい、守りたいんだ。今だけじゃなく、これから先も』


樹さんが、精一杯言葉をつむぎ出す…


私は、震える心を抑えるのに必死だった。


『俺、柚葉が好きだ』


『樹さん…』


樹さんは、花束を抱えたままの私を抱きしめた。


『柚葉と一緒にいたい。お前の笑顔を、すぐ隣りで見ていたい』


全身の力が抜けていくのを感じた。


樹さんが抱きしめてくれてるから、かろうじて立っていられた。


樹さんは、私の瞳から流れる涙を、手袋を取った指で拭ってくれた。


『…すぐに答えはいらない。柚葉の気持ちが落ち着くまで、いつまででも待つ。ただ、俺の誘いは断るな』


そう言って、樹さんは…


優しく微笑んだ。


樹さんの笑顔を、とても愛おしく感じた。
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