2人のあなたに愛されて～歪んだ溺愛と密かな溺愛～

『ずいぶんね。あなたは、私が嫌いなの？私は、樹がこんなに好きなのに』


『嫌いって言ってるわけじゃない。俺はお前を、仲間だとは思ってるが、女性としては見ていない。俺は…柚葉が好きだ。こいつの顔も性格も…全部。だから、柚葉と結婚する』


沙也加さんは、下を向いて、唇を噛んだ。


そして、ゆっくり顔を上げて言った。


『柚葉さん、樹のこと本気なの？』


そんなこと言われても、答えられないよ。


『柚葉さん、黙ってるわよ、樹。柚葉さんには、結婚する気ないんじゃないの？』


しばしの沈黙。


もう、無理。


樹さんの視線と、沙也加さんの視線に耐えられず、私は…


『あの…私、樹さんが好きです、だから…結婚します！』


って…


何言っちゃってるのよ、私。


この言葉は、樹さんに協力するために、つい出た言葉だよね、私の本心じゃないよね…


自分でも、何が何だかわからなかった。


樹さんは、優しい顔をして、私の頭をポンポンした。