2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
『何よ…私、絶対に認めない。パパの会社と取引が出来なくなってもいいの?』


『…お前は、そんなことする奴じゃない。それに、モデル仲間の健人も貴也も、お前のこと好きなんだ。そのこと、知ってるだろ?あいつらは、本当に良い奴だ。だから…お前はお前の幸せを見つけて欲しい。俺には…柚葉が必要なんだ』


樹さんは、沙也加さんの前に立って、そう優しく言った。


こんなこと言われたら…沙也加さん、余計に樹さんを好きになるかも…


それくらい、樹さんの言葉には、温かさがある。


私も、何度、心を揺さぶられたかわからない。


『それでも、私…やっぱり樹が好き。樹を諦めたくない。柚葉さん、今日から私達は、ライバルだから…絶対、あなたには負けない』


そう言って、沙也加さんは、足早にラウンジを出て行った。


私は、なぜか沙也加さんを憎めなかった…


人を好きになって、それが成就しない気持ちって、本当につらいから…


ごめんなさい、嘘ついてしまって…
< 162 / 244 >

この作品をシェア

pagetop