2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
樹のその言葉に、ビクッとして、私は、2人から離れた。


『…僕は…僕は…柚葉が好きだ。でも…やっぱりお前を…殴れないよ』


『柊、殴ってくれ!』


『無理だよ…僕は…情けないな。弟を殴ろうとするなんて…本当、最低だ』


柊君は、ゆっくりとこぶしを下ろし、樹から離れた。


そして、柊君は…泣いた。


床に四つん這いになって、悲しそうな声で…泣いたんだ。


私も…その姿を見て、涙が止まらなかった。


柊君、ごめん。


あなたは、本当に優しくて、素敵な人だったよ。


ただ、恋愛感が合わなかっただけ。


今はすごく、感謝してる。


だから、これからは…


絶対に、絶対に幸せになって欲しい。


どんな恋愛をしたとしても、柊君が毎日笑っていられるように…


私、本気でそう願ってる。


『樹…今度こそ、柚葉のこと頼んだよ。本当は、ここに来る前から、こうなることわかってた。柚葉の気持ちが、もう僕にはなくて、樹にあること。でも、何か、それが悔しくて…だから…本当に情けない、ごめん』
< 217 / 244 >

この作品をシェア

pagetop