2人のあなたに愛されて~歪んだ溺愛と密かな溺愛~
『ごめん、ごめん、柚葉。樹のジョークだから、気にしないで。樹、お前な』


『本当のことだから、仕方ない』


思わず私の目が据わる。


『いい加減にしてくれ。いくら樹でも、柚葉のこと悪く言うなら許さない』


『…』


横を向いて、何も言わない樹さん。


『あ、大丈夫です、大丈夫。まあ、美人じゃないのは本当のことだから…あはは』


場の雰囲気が私のせいで悪くなるのは、ものすごく嫌だった。


何とか愛想笑いで誤魔化したけど…


『ごめん、本当に樹の言うことは気にしないで。さあ、行こうか』


柊君が、申し訳なさそうに言ってくれた。


樹さんは、ほぼ荷物を持っていなかった。


ジーンズにシャツ、ジャンパー姿で、かなりラフな格好だと思った。


支社長とは…とても思えない感じ。


私は気を取り直して、樹さんに話しかけた。


『樹さん、英語ペラペラなんですよね。すごいですね』
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