エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
そんな濃密でむせかえるような甘い朝を楽しんだふたりは、出社するのがすっかりギリギリの時間になってしまった。
小走りで本社ビルに向かいながらお互いに文句を言う。
「もう、だから止めてって言ったのに」
「最初は日菜子も乗り気だっただろ」
「……っもう、そういうこと言わないで」
否定できないぶん、諸手をあげて怒ることもできない。
「日菜子がかわいいのが悪いんだ」
「え? わたしのせいなの?」
仕掛けてきたのは拓海の方なのに、あまりにも理不尽だ。
思わず足を止めた日菜子の顔を見て、拓海が笑う。
「仕方ないだろ。それだけお前のことが好きなんだ」
歯を見せて笑う拓海の言葉は本気かどうかわからない。けれど日菜子をドキドキさせるには十分で。
「もう……ずるい」
小さな声でつぶやいた。
「ん? なんか言ったか?」
「ううん。何でもない」
首を振る日菜子の背中を拓海がぽんと叩く。
「ほら、ふたりして遅れたらそれこそ社内の噂の的だぞ」
「それは困る!」
急に走り出した日菜子を、拓海は笑いながら追いかけた。