エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
 拓海が日菜子のために色々動いてくれていたのは、もちろん承知している。けれどこうやって人伝に聞くとますます感謝の気持ちがこみ上げてくる。

 感謝の気持ちと愛しさの籠もった目で彼を見ると、照れ隠しで顔を背けて髪をかき上げていた。

「わからないようにやってたつもりだったんですけど、バッチリ見られてたんですね」

「ああ、君がへまするようなことがあれば隙を見て、松風さんへのアプローチを再開しようと思ってたから」

 西野の言葉に、拓海が目を見開く。

「冗談だよ。あんまり不甲斐なかったら、そこにつけ込もうと思ってたけど、無理みたいだな」

「もちろんです。俺、こいつのことは守ってやるって決めてるんで。心配ご無用です」

 さっきまでは殊勝に西野に対して感謝の意を伝えていたのに、すでにいつもの拓海に戻ってしまった。

 けれどそれでこそ彼らしいと思う。西野もそう感じたのか口元に笑みを浮かべていた。

「ふたりともよかったな。じゃあ、僕は帰るから。次の社内コンペは負けたくないしね」

「ありがとうございました」

 日菜子と拓海はふたりで西野に頭を下げる。西野はそんなふたりを交互に見て笑って出ていった。

 足音はすぐに遠ざかった。するとグイッと体を引き寄せられ抱きしめられる。日菜子も彼の背中に手を回す。

 するとそれまであった緊張がするするとほどけた。安心して立っていられなくなった日菜子を支えてより体をくっつける。

「部内のみんなも心配してた。誰ひとり日菜子をうたがってなかったし、斉藤さんなんか毎日泣きそうな顔で仕事していた」

「そう......だったんだ」
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