エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~

 焦った犯人がおそらくなんらかの行動に出るのではないかと、その人物をあぶり出だす作戦をたてた。

 その決行日が今日。設計部の飲み会を催して部署のあるフロアに人が残らないようにして、犯人が行動しやすい環境を整える。

 そしてそこに現れたのが、脇坂だったのだ。

 ヒアリングは脇坂とは別の部屋だったが、彼女の供述のつじつまを合わせるために何度か部長が確認のために日菜子と拓海のいる部屋を訪れた。

 当時の記憶を呼び起こしながら、ひとつずつ答えていく。そこで日菜子の知らなかった事実が次々とあきらかになっていく。

 脇坂がライバル社の担当と初めて接触したのはちょうど、拓海の担当を外れる少し前のことだった。

 当時元彼の作った借金の肩代わりをした脇坂がライバル社に目をつけられたのだ。

 拓海の担当だった彼女に白羽の矢を立てたのだが、その後すぐにアシスタントではなくなってしまい、彼のデータにアクセスするチャンスが少なくなってしまう。

 そこでこれ以上は協力できないと申し出た。脇坂も自分のやろうとしていることが怖くなってしまったのだ。

 それにもかかわらず、今度は日菜子のパソコンに遠隔操作のソフトをインストールして、彼女に罪をなすりつけるように指示された。

 彼女も本来ならばそんな怖い話は引き受けなかっただろう。しかし社内のエースである拓海のアシスタントを外されてしまったこと。

 また同時期にそれまでパッとしなかった日菜子が、みんなと打ち解けたことによって嫉妬心が芽生えてしまった。

 色々な心の闇が重なり、彼女は犯罪に手を染めてしまったのだ。だからといって許されるわけではない。けれどなんだか悲しい気持ちになったのも確かだった。
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