エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
エピローグ
エピローグ
あの事件があって一年後。拓海が設計を担当した幼稚園の落成式が行われた。社長を始め設計部・営業部の部長。そして拓海もそれに参加した。
あの後。最終的にライバル社ではなく、美星建設が仕事を受注することになった。拓海の考えたデザインは学校法人の理事会でも高く評価された。
そして幼稚園が完成してすぐに、新しく高校の移転が決まりその校舎もまた美星建設が受注することに決まったのだ。もちろん相手は設計に拓海を指定している。
脇坂の起こした事件は、社内でも衝撃が走った。しばらくの間はみな一様に暗い表情をしていたけれど、その教訓を活かしお互い周囲に目を配らせるようになり結果として結束は強くなった。
拓海は実績を買われてまもなく課長への昇進が決まっている。日菜子もそんな彼を支えて穏やかな日々を過ごしていた。
順風満帆なのは仕事だけではなかった。
ふたりの中も一年前よりも、より深くなっていた。
そんな秋の日。拓海にドライブに誘われた日菜子は彼の運転する車の助手席に乗って、行き先を聞いていなかったことに気がついた。
「あれ? 今日はどこに行くの?」
「ん、そう遠くじゃないから」
あえて行き先を告げない拓海だったが、日菜子はそんなに気にしていなかった。彼にすべてを預けていれば、大丈夫だということを知っているからだ。
運転する拓海の横顔を見つめて、幸せだなあと思っていると高台を走っていた車がゆっくりと減速しはじめた。
彼が車を止めたのは、住宅街の一角にある広場で、そこからは街を見下ろす事ができる。
車を降りた拓海についていく。ふたり並んで街を見ていると、あの幼稚園がよく見えることに気がついた。
「あれって拓海が設計した幼稚園だよね?」
「ああ、ここからよく見えるだろ?」