エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
あたりまえだろうと拓海を睨んだ。しかし彼は日菜子が感情をむき出しにすればするほど、なぜだか愉快そうに笑って見ている。
ものすごくバカにされた気分でさらに不満気な顔をすると、よけいにうれしそうにした。まったくもっての悪循環。これでは埒が明かない。
(早く帰りたい)
さっさと片付けてしまおうと心に決める。
「話ってなにかな? 仕事の話なら会社でお願いしたいんだけど」
結局日菜子は感情を出さずに能面のような顔をする。
「仕事の話じゃないから、ここまで来た。松風が会社でしていいって言うなら明日み
んなの前で――」
「いや! えっと、是非ここでお願いします」
もう話の内容は分かっているのだ。拓海の言う通り、職場よりもここのほうがありがたい。
「必死だな。俺はその必死になっている理由を知りたいんだけど」
ゆっくりとカップ置いて、カウンターに頬杖をついた拓海が、じっと日菜子を見た。形の良いその目には好奇心が強く現れていた。
「なあ、どうして会社では今みたいに自分の気持ちを言ったりしないんだ? どうしてそんな猫かぶってるんだよ? もめ事があったとしても、あんだけ強ければ鉄拳制裁だってできるだろ?」
「猫なんかかぶっていないし、鉄拳制裁も無理」
そもそもいやなことがあるからって、鉄拳制裁なんてできるわけない。
「いやいや明らかに、今の松風と会社の松風の態度違うだろ? なんでだ?」
「違わないし、そもそも南沢くんには関係ない。アシスタントの件も撤回してほしい」
何も話すつもりはないし、アシスタントをするつもりもないとはっきり伝えた。
バッサリと言い切った日菜子を見て、拓海は驚いた顔をしていたけれどいきなり笑い出した。
「やっぱり、お前面白いな。嫌がっているところ、申し訳ないけど益々興味が出た」
「なんでよっ!」
こんなに全身を使って拒絶しているにもかかわらず、相手にまったく伝わっていない。
冷静にならなくてはいけないと思うのに、思わず声を荒げてしまった。
「そういうところ、気に入ったんだけど」
にっこりと笑う拓海を見て、日菜子は目を見開き絶句する。今までのやりとりの中で気に入る要素なんて、皆無だと思うのだけれど。
「ちょっと、……何言ってるか、わかんない」
どう考えても、日菜子に拓海のことは理解できそうにない。
「まあ、お前がどう思おうが関係ないけどな。アシスタントはもちろんやってもらうから」
「だから……なんでよぉ」
どうしてここまで興味を持たれたのか、さっぱり分からない。
「松風が断りたいなら好きにすればいいさ」
「本当に?」
思い切り顔を輝かせた日菜子に、拓海は無情な言葉を投げつける。