エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
第二章 彼女が眼鏡をはずすとき
第二章
画面に向かって図面にミリ単位の変更を加えていく。画面を切り替えて、指示通り漏れがないか確認しながら進める。
納期のある仕事がほとんどで、素早く正確にすることがなによりも求められる。
(わかってる、わかってるけど……この量ってば、どういうこと!?)
拓海のアシスタントになって、一週間と少し。
これまでもそれなりの仕事をこなしてきた日菜子だったが、拓海のアシスタントになって目の回るような忙しさを送っていた。
彼の仕事は卓越したセンスに加え、そつなく抜かりない。一言で言えばすばらしい仕事ぶりだ。
だがそれ故、日菜子に対しての要求のレベルも高い。そのうえ期待のホープと言われるだけあって、仕事量がすさまじいのだ。
日菜子は、それに応えるべく身を粉にして働く日々を過ごしていた。
(でも……やっぱりすごいんだよねぇ)
拓海の描く設計図は、非常に魅力的だった。顧客の意図を汲むことはもちろんのこと、使いやすさとデザイン性を兼ねそなえている。
何人かのアシスタントをやってきて、図面も毎日たくさん見ている。それでも「美しい図面」だと思えたのは拓海のがはじめてだった。
(でもまぁ、それとこの忙しさとは別の話だけどね)
「コホッ、コホッ」
今朝から咳が出ている。今日は早く帰ってゆっくりしたい。
「松風さん、大丈夫かい?」
「あ、西野(にしの)主任。お疲れ様です。すみません、ご心配いただいて」
一課のエースが拓海ならば、二課のエースはこの西野だ。日菜子達の三年先輩、拓海同様、社外のデザイン賞も授賞している。
落ち着いた雰囲気のイケメンだ。柔らかい物腰と爽やかな笑顔で、社内でもなかなか人気の男性だ。ちなみに日菜子も彼には好感を持っていた。
「先日急ぎで手伝ったもらった仕事、おかげで間に合ったよ。ありがとう」
本来ならば本人か担当アシスタントが行うのだが、急ぎの場合は他の人の仕事を手伝うこともある。しかしみんな手一杯の仕事を抱えているので、あまり引き受けたがらないのが現状だ。
しかし困っている彼をほうっておけずに、手を貸したのだ。
「いえ、よかったです。わたしでもお役に立てて」
「いや、お役に立ててなんてレベルじゃないよ。松風さん、本当に仕事が早くて正確だね。また手伝って欲しいな」
「はい……まぁ、今はとてもそんな余裕はないんですけど」
「そうか、たしか担当が一課に変わって、今は南沢の担当になったんだったな」
「はい」
苦笑いを浮かべると、何かと察してくれたようだ。
「大変だろうけれど、頑張って。いや、南沢がうらやましいよ」
社交辞令だとわかっているが、仕事が出来る西野に褒められるとうれしい。控えめな笑顔を浮かべて「ありがとうございます」と伝えた。
西野が仕事に戻ると入れ替わりに、拓海がやってきた。