エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
拓海はしばらくだまったまま画面を見つめていたかと思うと、急にマウスを動かた。日菜子の言葉に、拓海の表情が変わる。雰囲気が一変した。日菜子は驚き目をわずかに見開き彼を見た。
「それ、もうちょっと詳しく教えて」
「え……はい。こっちの通りなんですが、自転車と人だけが通れる細い道があって……」
自分の知り得る情報を余すところなく伝える。すると拓海はしばらくだまったまま画面を見つめていたかと思うと、急にマウスを動かして図面に自転車置き場を追加した。
「これなら、どう?」
「いいんですけど……今ここにあるクヌギの木はどうなる予定なんですか?」
「あ? どうだったかな。ちょっと待ってろ」
拓海はデスクに戻り案件をまとめてあるバインダーを手に取り、中を確認しながら戻ってくる。
「クヌギってこれか?」
現場の写真を見せられた日菜子はうなずいた。
「もし、この木が今のまま残るなら自転車置き場の場所は変えたほうがいいです。屋根に落ち葉がたまると、掃除が大変なので」
説明し終わり拓海を見ると、彼はじーっと日菜子を見ていた。
「ど、どうかしましたか?」
いつも嫌みしか言わないのに、だまってしまったのでそれがなんだか怖い。
余計なことを言ってしまったのかもしれないと訝しむ日菜子に、拓海はふっと表情を和らげた。
「サンキュー、助かった」
拓海は日菜子の肩をひとつ叩いて、自分のデスクに戻ると、できあがったばかりの資料を持ってすぐに外出してしまった。
「……今、お礼を言われた?」
驚きで目を瞬かせた日菜子は、なんだかくすぐったい気持ちになった。別の仕事にとりかかりながらも、なぜだか頬が緩むのを止められなかった。