エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
昼間の熱気が残るなか、日菜子は拓海と肩を並べて駅に向かって歩いていた。
美味しい食事と、ワイン、デザート。それと、拓海との時間。
半ば強引に連れてこられたにもかかわらず、とても楽しかった。
アルコールが入り、ふわふわしたいい気持ちで歩いていた。
「まだ熱いな~次は、ワインじゃなくてビールだな。ビール」
ネクタイを緩めた拓海が、シャツの首元をパタパタさせてわずかばかりの涼を取っている。
拓海のことは入社したときから知っている、もう六年目。
けれどこれまで〝苦手なタイプ〟というだけで、彼を避けていた。まさかこんなふうにふたりで飲みに行く関係になるとは不思議だ。
考えてみれば、日菜子が男性とふたりっきりで食事をしたのは初めてのことだ。
もちろん恋愛に対して憧れがないわけではない。けれど自分にとっては縁遠いことだと思っていた。
それがまさか会社の同期――それもとびっきりのいい男――と、出掛けることになるとは。
(こんなことってあるんだなぁ)
隣を歩く拓海を見ながら考え事をしていたせいか、前から来る自転車に気がつかなかった。
「おい、松風!」
「え? ……あっ!」
腕を掴まれ、強く引かれた。気がつくと日菜子は拓海の胸に顔を埋めていた。
薄いシャツの布越しに感じる彼の体温や、突然強くなった彼の香りに心臓が一気に跳ね上がる。
背中に回された手がたくましくて、意識してしまい耳まで真っ赤になった。
「おい、大丈夫か?」
頭上から拓海の気遣う声が聞こえてきて、顔を上げる。至近距離で見つめられてかーっと顔に熱が集まるのを感じた。
とっさに拓海の腕から逃れようと後ろに体を引いたが、勢いあまってふらついてしまう。
「おい、バカっ」