エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
そんな日菜子の体を支えたのも拓海だ。背中に回された大きな手に力がこもる。
「ご、ごめんね」
今度はしっかりと足を踏ん張って立った。そしてゆっくりと拓海から距離をとる。
彼も日菜子の様子を確認すると、手を背中からどけた。
「なにぼーっとしていたんだ」
そう聞かれても、理由が理由だけに答えられない。
「ごめんね。迷惑かけて」
「それは別にいいけど。怪我してないか?」
心配げに日菜子の様子を窺う拓海に、恥ずかしくなって早口でまくしたてた。
「平気だよ。わたしが強いの、南沢くん知ってるでしょ? 昔ほどじゃないけど、今だって――」
「平気じゃないだろ」
「え?」
それまで恥ずかしさをごまかすようにしていた日菜子に、拓海は真剣な眼差しを向けた。
「平気なわけ、ないだろ。女の子なんだから」
(……女の子……か)
いつものからかうような雰囲気はかけらもなかった。本当にそう思っていることがひしひしと伝わってくる。
胸のなかにじんわりと広がる喜びに、目頭が熱くなってくる。
日菜子は自分がコンプレックスの塊であることを自覚していた。他人からどんなふうに見られるかいつも気にしていた。
拓海としては、特別意味のある言葉ではないかもしれない。けれど自分を否定してきた日菜子にとっては、泣きたくなるほどうれしい言葉だった。
「どうかしたのか? やっぱりどこか怪我して――」
「ううん、なんでもないよ」
胸のうちを悟られないように笑顔を作って顔をあげた。目の前には心配そうに見つめる拓海の顔がある。
「だったらいいけど……ほら、行くぞ。終電間に合わなくなる」
拓海は日菜子の肩をポンッと叩いて、一歩前を歩き出した。その背中についていく。
(急にあんなこと言うなんて、ずるいな……)
自分の中に芽生えつつある感情に戸惑いながら、おいていかれないように彼の後ろをついていった。
「ご、ごめんね」
今度はしっかりと足を踏ん張って立った。そしてゆっくりと拓海から距離をとる。
彼も日菜子の様子を確認すると、手を背中からどけた。
「なにぼーっとしていたんだ」
そう聞かれても、理由が理由だけに答えられない。
「ごめんね。迷惑かけて」
「それは別にいいけど。怪我してないか?」
心配げに日菜子の様子を窺う拓海に、恥ずかしくなって早口でまくしたてた。
「平気だよ。わたしが強いの、南沢くん知ってるでしょ? 昔ほどじゃないけど、今だって――」
「平気じゃないだろ」
「え?」
それまで恥ずかしさをごまかすようにしていた日菜子に、拓海は真剣な眼差しを向けた。
「平気なわけ、ないだろ。女の子なんだから」
(……女の子……か)
いつものからかうような雰囲気はかけらもなかった。本当にそう思っていることがひしひしと伝わってくる。
胸のなかにじんわりと広がる喜びに、目頭が熱くなってくる。
日菜子は自分がコンプレックスの塊であることを自覚していた。他人からどんなふうに見られるかいつも気にしていた。
拓海としては、特別意味のある言葉ではないかもしれない。けれど自分を否定してきた日菜子にとっては、泣きたくなるほどうれしい言葉だった。
「どうかしたのか? やっぱりどこか怪我して――」
「ううん、なんでもないよ」
胸のうちを悟られないように笑顔を作って顔をあげた。目の前には心配そうに見つめる拓海の顔がある。
「だったらいいけど……ほら、行くぞ。終電間に合わなくなる」
拓海は日菜子の肩をポンッと叩いて、一歩前を歩き出した。その背中についていく。
(急にあんなこと言うなんて、ずるいな……)
自分の中に芽生えつつある感情に戸惑いながら、おいていかれないように彼の後ろをついていった。