エリート俺様同期の甘すぎる暴き方~オレ、欲しいものは絶対手に入れる主義だから~
その翌日土曜日。
日菜子のひとり暮らしをしている部屋のテーブルの上には、そうめんが機械の中でくるくると回っていた。
「ただでさえ狭いのに、これ必要?」
そう大きくはないテーブル。その大半が埋まってしまっている。日菜子は仕方なく補助用の折りたたみの小さなテーブルを出してその他の料理を並べた。
「いいじゃない、雰囲気が大事なんだから。一度やってみたかったの」
持ち込んだ張本人の美穂はうれしそうに箸を握り食べる気満々だ。
日菜子の部屋は会社から電車で三十分ほどのところにある。築八年の1DK。決して新しくはないけれど会社まで乗り換えなしで通え、バストイレが別々なのも決め手になった。
ときどき仕事を終えた美穂が、遊びにくることがある。今日はふたりで流しそうめんパーティをすることになった。
そうめんだけでは味気ないので、美穂が来るまでに
小海老と小エビと野菜のかき揚げと、唐揚げ。キュウリの即席漬けに豚キムチを用意した。
キンキンに冷えたビールを片手に、ガールズトークが繰り広げられる。
「で、昨日のデートはどうだったの?」
「ぐっ……ごほっ、ごほっ」
そうめんを頬張っていた日菜子は、美穂のいきなりの問いかけに盛大にむせる。あわててビールを手に取りごくごくと飲み干しなんとか落ち着かせた。
「勘違いしないで。デ、デートじゃないから」
手の平で唇を拭いながら否定する。けれど美穂はそれを面白がるような表情を浮かべていた。
「いいじゃない、別に照れなくて。楽しかったんでしょ? 顔見たらわかるよ」
肘でツンツンとつつかれて、美穂にはかなわないと観念した。
「……うん。不本意ながら」
最後に付け加えた言葉は、完全に負け惜しみだ。あれだけ拓海のことを苦手だと言っていたにもかかわらず、昨日は日菜子も楽しかったのだ。
美穂はニヤニヤとおもしろがるように笑っている。
「不本意でも、次誘われたら行くんでしょう?」
日菜子は美穂の問いかけに小さな声で「うん」と答えた。美穂の言う通り拓海にもう一度さそわれたら、間違いなく行くだろう。